「小さな赤い点」はブラックホールじゃなかった?JWSTが捉えた正体不明の天体、まさかの新説
ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)が捉えた「小さな赤い点(Little Red Dots)」、通称LRD。これまで天文学者たちは、この奇妙な赤いシミのような天体を「初期宇宙の銀河中心でガスをむさぼる超大質量ブラックホール」だと考えてきた。しかし、どうにも説明がつかない点が多すぎた。
X線ではほとんど観測されず、ブラックホールの周りにあるはずの塵(ちり)からの赤外線も出ていない。しかも、周囲の星と比べてブラックホールの質量が異常に大きすぎる。まるでルールを無視した存在だったのだ。
デニムに合う。履くだけで「ちょいワル」Tapoon そこでテキサス大学オースティン校の研究チームが『The Astrophysical Journal Letters』に発表したのが、まったく新しい解釈。なんと、この「小さな赤い点」は、ブラックホールではなく「生まれたての球状星団」なのではないか、という説だ。
球状星団というのは、数十万から数百万の星がぎゅっと集まった、宇宙最古級の星の集まり。天の川銀河にも数十個が衛星のように漂っている。もしこの説が正しければ、JWSTはこれまで星団の“誕生の瞬間”を撮影していたことになる。
なぜ今まで気づかれなかったのか。鍵はLRDの奇妙な光のパターンにある。LRDのスペクトルは、青い側と赤い側に分かれた「V字型」をしている。研究チームはこれを、2つの光源が重なった結果と説明する。
青い側は、超高温の若い星々からの紫外線。赤い側は、なんと「超巨星(スーパーマッシブスター)」という理論上の天体からの光だ。これは星団の中心で星同士が衝突合体を繰り返し、太陽の1万倍以上の質量を持つ巨大な星が生まれたもの。寿命はわずか100万年ほどだが、とてつもなく明るく輝く。この2つの光を組み合わせると、実際のLRDのV字型スペクトルと驚くほど一致したのだ。
数字の上でも整合性は取れている。LRDが多く見つかるのはビッグバンから8億〜12億年後。これを現在の球状星団の質量分布と比較すると、推定される質量がほぼ一致する。さらに、LRDが存在する時代は、天の川銀河で最も古い球状星団が形成された時期とも重なる。
化学的な証拠もある。球状星団にはヘリウムやナトリウム、アルミニウムなどに異常な濃縮パターンが見られる。LRDの中には実際にアルミニウムの兆候と弱いマグネシウムのシグナルを示すものがあり、この理論を支持している。
ただし、研究チームも「可能性はあるが確定ではない」と慎重だ。現在の超巨星モデルでは、実際のLRDの温度や明るさを完全には再現できていない。より精密な大気モデルや、星の回転、連星の影響を考慮した計算が必要になる。
それでも、この説が面白いのは「検証可能な予測」を具体的に示している点だ。今後のJWSTの観測で、特定の化学シグネチャーや質量パターンが確認されれば、理論は一気に現実味を帯びる。逆に否定されれば、また新たな謎が生まれる。
「小さな赤い点」がブラックホールでも、ただの星でもない、宇宙最古の“赤ちゃん星団”だったとしたら…。JWSTの次なる観測結果が待ち遠しい。
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