医師の68%が患者との「神聖な瞬間」を経験、バーンアウト防止に効くか
医師の半数以上が burnout(燃え尽き症候群)に悩んでいる。そんな中、カナダ・ウェスタン大学やミシガン大学などの研究チームが、ある意外な解決策を提案した。それは「Sacred Moment Rounds(神聖な瞬間ラウンド)」という取り組み。医師と患者の間に生まれる、ほんの数秒の本物のつながりが、医師の burnout を防ぎ、患者の well-being も高める可能性があるという。
論文は Journal of General Internal Medicine に掲載。研究者たちは「sacred moments(神聖な瞬間)」を、超越性や限界のなさ、深い相互接続性、精神的な感情を伴う短い時間と定義。宗教的な信念は必要なく、誰にでも起こりうるものだという。実際、内科医の約68%が患者との間にこうした瞬間を経験したことがあるとする研究もある。
デニムに合う。履くだけで「ちょいワル」Tapoon この「神聖な瞬間」には5つの特徴がある。日常を超えた何かが起こる感覚、時間や空間の感覚が変わる、深い真実にたどり着く、他者との深いつながり、そして畏敬の念や高揚感といった感情だ。心理学者の Kenneth Pargament が病院のチャプレン(霊的ケア従事者)を観察する中でこの言葉を生み出した。
しかし現代の医療現場は、こうした瞬間を妨げる要因であふれている。過重な患者数、スタッフ不足、問題を機械的に「見つけて直す」文化、短い入院期間、患者の感情に踏み込む会話の訓練不足。医師自身も感情の壁を作ってしまうことがある。
一方で、終末期の状況や患者の危機的状況、そして医師が単にその瞬間に完全に「そこにいる」ことが、こうした瞬間を引き起こすという。
研究チームが提案する「Sacred Moment Rounds」は、臨床スタッフと霊的ケアの専門家がファシリテートする安全な場で、医師同士が患者との meaningful な経験を共有するというもの。神聖な瞬間を「作り出す」のではなく、すでに起きているものに気づき、それを活かすことが目的だ。
システムレベルでは、適切な患者数やスタッフ配置、自然光や音楽、アートを取り入れた空間設計が推奨される。個人レベルでは、患者の感情を「修正しようとせず」に寄り添う「compassionate witnessing(思いやりのある見守り)」や、病室に入る前の手指衛生の時間にマインドフルネスを実践することが提案されている。
患者にとっては、こうした瞬間がストレス緩衝材となり、うつや不安の症状を減らし、人生の目的意識を強め、ケアへの満足度や医師との関係を改善するというデータもある。
1992年、がん患者だった作家 Anatole Broyard はこう書いた。「私の医者には、私の前立腺だけでなく、私の精神を探ってほしい。そうした認識がなければ、私はただの病気にすぎない」。
もちろん、これだけで病院の予算や人員不足が解決するわけではない。それでも研究者たちは、すでに現場で起きている瞬間について語り合う場を設けることが、変化の第一歩になると考えている。
ただしこの研究は新しいデータを出したものではなく、既存研究を統合した概念モデル。研究の多くは心理療法の現場や限られた医療環境で行われており、多様な文化での検証や脳科学的な裏付けは今後の課題とされている。
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