たった鉛筆の先ほどの脳領域が、あなたの睡眠の質を決めていた
同じ8時間ベッドにいても、朝スッキリ起きられる人と、どんより疲れが取れない人がいる。その差は、脳幹の奥深くに埋もれた、鉛筆の先ほどの大きさしかない細胞の集まりが決めているかもしれない。
ベルギーのリエージュ大学の研究チームが、超高性能な7テスラのMRIを使って調べたのは「青斑核(locus coeruleus)」という小さな領域。これまで動物実験では睡眠と覚醒の調整役として知られていたが、人間でも同じことが言えるのかは謎だった。今回、チームはJournal of Biomedical Scienceに発表した論文で、その関連性を人間で初めて示した。
これは高圧洗浄機と同等の強さで、電力不要BlastPro 研究には52人の健康な成人が参加。平均22歳の若年グループ34人と、平均61歳の高齢グループ18人に分けられ、全員が一晩、頭皮にセンサーを付けて睡眠中の脳波を測定された。さらに覚醒時にMRIで青斑核の活動を観察。その際、参加者には「反転して見える立方体の錯視を見続けるタスク」と「標準音の中に混じった変な音を聞き分けるタスク」の2つをやってもらった。前者は青斑核が持続的に安定した活動(トニック活動)を、後者は瞬間的に鋭く反応する活動(フェイジック活動)を引き出すように設計されている。
結果ははっきり。錯視タスクで青斑核が強く反応した人ほど、その夜のレム睡眠中にシータ波が多く出ており、レム睡眠の質が高いことが示された。逆に、高齢者では音の聞き分けタスクで青斑核が過剰に反応した人ほど、レム睡眠中のシータ活動が低下していた。若年者にはこの傾向は見られなかった。つまり、青斑核が「反応しすぎる」状態、つまり覚醒中に常に警戒モードになっていると、レム睡眠の質が落ちる可能性があるわけだ。
この関連性はレム睡眠に特化しており、ノンレム睡眠(深い眠り)のエネルギー量とは有意な関係がなかった。青斑核は、レム睡眠中はほとんど活動を止めないとレム睡眠が始まらないことが知られており、研究者は「覚醒時の活動パターンが、その人の“青斑核の気質”のようなものを反映しており、それが夜の睡眠の質にも影響する」と推測している。
特に気になるのが高齢者への影響。加齢とともに睡眠の質は下がるが、その原因の一つがこの青斑核のバランス崩れかもしれない。論文では「この発見は、加齢に伴う睡眠不満の多さや、不眠症、さらにはアルツハイマー病やパーキンソン病といった疾患にも示唆を与える可能性がある」と述べている。実際、青斑核はアルツハイマー病やパーキンソン病で最初に異常タンパク質がたまり始める場所の一つで、症状が出る数十年も前から変化が始まると言われている。
ただし、この研究はあくまで関連性を見つけた段階で、治療法を試したわけではない。また、高齢者グループはMRI撮影と睡眠計測の間に約15カ月のずれがあったり、参加者の大半が女性だったりと、いくつか限界もある。それでも、覚醒時に青斑核の活動を測るだけで、夜寝なくても睡眠の質がある程度予測できるかもしれない――というのは、なかなかロマンがある話だ。
眠りの悩みを抱える何百万もの大人たちにとって、その答えは、脳幹の奥深くにある、たった鉛筆の先ほどの大きさの領域に隠されているのかもしれない。
デニムに合う。履くだけで「ちょいワル」Tapoon
今、あなたにオススメ