「1万人の死」より「1人の死」に反応する脳。最新研究が示す残酷な格差
「遠くの大災害より、身近な1人の死」。そんな直感を裏付ける研究結果が、英サセックス大学から発表された。
fMRI(機能的磁気共鳴画像法)を使って25人の英国人を調べたところ、海外で何千人もの命が失われるニュースを読んでも、脳の反応は意外なほど鈍かったのだ。
夜用眼鏡が運転手の間でますます人気になるナイトライダー 研究チームは被験者に、実際のニュースを基にした「〇〇で△人が死亡の危険」という見出しを読ませ、その後に生存か死亡かの結果を伝えた。見出しは英国国内の事件と、56カ国の海外の事件の両方を含み、人数は1人から数万人まで様々。
お金の話では脳は素直だった。リスクのある金額が増えれば、脳の複数の領域が活発になった。ところが、人の命になると逆転現象が起きる。
国内の被害者数が増えるほど、脳の活動はむしろ低下した。研究チームはこれを「思いやりの崩壊(collapse of compassion)」と表現する。数が増えすぎると、かえって感情が追いつかなくなるのだ。
海外のケースではさらに複雑で、1人の時は反応が弱く、中規模でピークに達し、大規模になるとまた低下する「逆U字型」のパターンが見られた。しかも、海外の1人の犠牲者に対する脳の反応は、国内の1人より明らかに弱かった。
最も衝撃的なのは「死んだ」と知らされた瞬間の反応だ。国内の犠牲者では、生存より死亡の方が強い脳反応を引き起こした。しかし海外の犠牲者では、生存も死亡も脳の反応に差がなかった。まるで「外国の人の死」は、情報として処理されても感情が伴っていないかのようだ。
被験者は金銭分配タスクでも同じバイアスを示した。「洪水による死亡を防ぐための予算を、国内と海外にどう配分するか」という仮想の場面で、彼らは英国のプロジェクトに全体的により多くを割り当て、さらに1人当たりの金額は支援人数が増えるにつれて急激に減った。
「この研究は、人が口にする価値観と、脳の実際の反応との間にギャップがあることを示しています」と研究者は指摘する。
注目すべきは、被験者が「リベラルで非孤立主義的」な傾向にあった点だ。研究者は「よりナショナリスト的な集団で調べれば、国内外の差はもっと大きくなる可能性がある」と述べている。
もちろん25人だけの小規模な実験で、全てを説明できるわけではない。しかし「遠くの悲劇に関心が集まらない」という長年の疑問に、脳科学の視点から一石を投じる結果と言えるだろう。
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