ALS発症を血液1回で予測?19種類のタンパク質が誤差1.6年で的中
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の遺伝子を持っている人にとって、「いつ症状が出るのか」という不安は想像以上に大きい。そんな中、血液を1回採るだけで、発症のタイミングをかなり正確に予測できるかもしれない——そんな研究結果が『Nature Medicine』に掲載された。
マイアミ大学の研究チームは、ALS遺伝子を持つ人々を長期間追跡した「Pre-fALS」研究のデータを活用。516検体の血液プラズマから5400種類以上のタンパク質を測定し、最終的に19種類のタンパク質の組み合わせが、発症予測に極めて有効であることを突き止めた。
夜用眼鏡が運転手の間でますます人気になるナイトライダー このパネルは、「遺伝子を持っているがまだ症状が出ていない人」が、6ヶ月後から5年後までの間に実際に発症するかどうかを高精度で予測。1年以内の発症予測では、従来の最良マーカー「NEFL」(神経線維の損傷を示す)が0.775の精度だったのに対し、19タンパクパネルは0.889を記録。5年スパンでも0.802対0.712と上回った。
さらに衝撃的なのは、「いつ発症するか」の予測精度だ。パネルを使うと、発症までの期間を平均誤差約1.6年で推定できた。NEFLだけでは誤差2.4年だったので、約1年も精度が向上した計算になる。
ここで興味深いのが、この19のタンパク質の多くが神経ではなく筋肉に関連している点だ。筋肉の構造や維持、分解に関わるタンパク質が、症状が出るずっと前から血中で増加していたという。従来ALSは「神経細胞が死ぬ病気」というイメージが強かったが、実は筋肉の変化がもっと早い段階で始まっている可能性を示唆している。
「これは本当に意味のある発見です。ALSの予防を目指す臨床試験をデザインする上で、『この人はあと2年で発症しそうだ』と見極められれば、適切な期間で試験を組めるからです」と研究チームは説明する。
ただし、現時点ではあくまで研究段階。このパネルは特殊な機械でしか測定できず、一般の病院で即座に使えるわけではない。また、今回の対象はALSの遺伝子が特定されている家族性の患者が中心で、遺伝子が不明な孤発例(患者の大多数)に同じ結果が当てはまるかは未検証だ。
「この発見がどれだけ早く、症状が出る前に病気を止める薬につながるか——それが今、研究者たちが競って取り組んでいる問いです」と論文の責任著者は語る。まだ実用化には時間がかかりそうだが、「発症するかどうか」ではなく「いつ発症するか」が血液でわかる日が、思ったより近いのかもしれない。
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