猛毒カタツムリのペプチドがオピオイド超え?マウスで痛み67%減
見た目はただのキレイな貝殻。でもその中には、医療の常識を覆すかもしれない“化学兵器”が隠れている。
イモガイの一種、Conus araneosusの毒から見つかったペプチド「AoIA」。この物質が、マウスの炎症性疼痛を最大67%も抑えたという研究が、学術誌『Nature Structural & Molecular Biology』に掲載された。
寝苦しい夜が、これひとつで快適にAirio Pro 注目すべきは、その仕組み。オピオイドのように脳のオピオイド受容体に作用するのではなく、神経系の「ノルアドレナリントランスポーター(NET)」というタンパク質をブロック。すると、体内で自然に作られる鎮痛物質ノルアドレナリンが神経細胞の外に長くとどまり、痛みを和らげる。
研究チームはクライオ電子顕微鏡で、AoIAがNETに結合する様子をほぼ原子レベルで撮影。その画像は、ペプチドがNETの外側の入り口と、ノルアドレナリンが本来収まる深いポケットの両方を同時に“つかむ”という驚きの構造を示した。これにより、AoIAはドーパミンやセロトニンのトランスポーターには影響せず、ピンポイントでNETだけを狙って働く。
実際の効果はマウスで確認。炎症を起こした足をなめたりかんだりする痛み行動が、低用量で55%、高用量で67%減少。同じテストで、先行研究の類縁ペプチドMrIAはまったく効果を示さなかった。しかも、AoIAを投与したマウスは回転棒の上でバランスを保つ運動テストに問題なく合格。オピオイドでよく見られる鎮静や運動機能障害も起きなかった。
慢性疼痛は世界中で何億人もの人を苦しめ、障害の主要原因のひとつ。オピオイドは強い鎮痛効果を持つ反面、依存症や呼吸抑制、過剰摂取による死亡リスクがつきまとう。AoIAはオピオイド系を一切使わず、しかも皮下注射で効果を発揮した。既に承認されているイモガイ由来の鎮痛薬ジコノチドは脊髄腔内投与が必要で、ハードルが高い。
とはいえ、まだマウスのオスだけの実験で、ヒトでの有効性は未確認。研究者も「今後の研究では雌雄両方を使うべき」と認めている。AoIAが実際の薬になるかは、これからの臨床試験次第。
それでも、このペプチドが標的をどうつかむかが原子レベルで分かったことで、創薬の設計図ははっきりした。オピオイドに代わる痛み止めを探し続けてきた研究者たちにとって、この“毒”が新たな希望になるかもしれない。
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