1342年、欧州を16回の大洪水が2年で襲った…専門家「再び起こり得る」
「まさか、そんなことが」と思わず声が出そうな話が、Natureに発表された研究で明らかになった。
なんと1341年から1343年にかけて、ヨーロッパ全土を16回もの大洪水が襲っていたというのだ。そのうち4回は、500年から1000年に一度の規模と推定される激甚なもの。しかもそれがたった2年の間に集中していた。
夜間運転用メガネが今ドライバーに急増中ナイトライダー これまで歴史家たちは、1342年7月の「マグダラの洪水」を、過去1000年で最大の単発的な災害として捉えてきた。しかし研究チームが古文書や修道院の記録など1000以上の史料を解析したところ、それは連続した大洪水のほんの一部だったことが判明。2月の「キャンドルマス洪水」ではプラハのユディト橋(1172年建造)が流され、春に3回、7月にマグダラ洪水、秋に2回。翌1343年も7月と8月に大洪水がアルプスを越えて襲った。
なぜこの連続災害が忘れられたのか?研究によれば、「災害は一番大きなものだけが記憶に刻まれる」という人間の心理が原因だという。マグダラ洪水だけが教会の壁に水位標として刻まれ、他の洪水は「一連の出来事の一部」として歴史から消えていった。
研究者らはこの2年間を、1999年から2013年に欧州を襲った大洪水(1999年、2002年、2005年、2006年、2013年)を全て足して、さらに数十の中小洪水を詰め込んだようなものだと例える。
なぜ短期間にこれだけの洪水が起きたのか?原因として考えられているのは、1340〜41年のアイスランド・ヘクラ山の大噴火だ。噴煙が北半球を冷やし、偏西風を南下させた。さらに北極海の海氷が減少し、暖かい海面から大量の水蒸気が供給された。冷たい空気と暖かい海がぶつかり、記録的な豪雨を連発させたという。
この災害は社会を大きく変えた。道路は寸断され、橋は消え、軍事行動は停止。南ドイツやスイスでは飢饉が発生し、イタリアでは塩田が壊滅してキプロスからの輸入を余儀なくされた。血の混じった下痢(赤痢とみられる)が蔓延し、洪水が引かない地域では何年も疫病が続いた。
皮肉なことに、この大災害が後の防災技術を進歩させた。プラハのユディト橋の代わりに架けられたカレル橋は、より広く高いアーチと鋭い氷除けの橋脚を持ち、河岸はなんと9メートルもかさ上げされた。
研究チームは警告する。「現代の洪水対策は、数十年のデータと孤立した歴史災害に基づいて設計されている。連続した巨大洪水が同じ地域を襲う可能性は、ほとんど考慮されていない」。気候変動で極端な嵐が増えると予測される今こそ、14世紀の教訓を生かす時かもしれない。
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