3億年前の赤ちゃん化石が覆す「オタマジャクシ常識」、四肢動物は小さな大人として生まれていた
「オタマジャクシからカエルへ」という成長のイメージは、生物の進化を語る上で長らく当たり前とされてきた。でも、どうやらその“常識”は、3億年以上前の世界では通用しなかったらしい。
米シカゴのフィールド博物館などが学術誌『Science』に発表した論文によると、初期の四肢動物の赤ちゃん化石には、オタマジャクシに特徴的な「外エラ」の痕跡が一切見つからなかったんだそうだ。つまり、彼らは水中でエラ呼吸する幼生期を経ずに、生まれたときからすでに親のミニチュア版だった可能性が高いってわけ。
デニムに合う。履くだけで「ちょいワル」Tapoon 研究チームが注目したのは、イリノイ州中部にある「メイゾンクリーク化石層」。約3億700万年前の沼地で、鉄分を多く含む岩のノジュール(団塊)の中に、驚くほど細かい状態で生物が保存されている。軟組織や内臓、消化管の中身まで残っているケースもあり、古生物学者にとってはまさに宝の山だ。
チームはフィールド博物館やスミソニアン博物館など、複数の機関のコレクションを総ざらい。魚と四肢動物の“中間”にあたるグループを含む、3種類の生き物の超初期の個体を特定した。具体的には、ヒレのある魚に近い「メガリクティス類」、脚のないミミズみたいな「アイストポッド類」、そしてワニっぽい見た目の「エンボロメア類」だ。
どの標本を調べても、外エラはない。中でもフィールド博物館が所蔵するエンボロメア類の標本は、頭部や首の軟組織がくっきり保存されていたにもかかわらず、エラらしき構造はゼロ。走査型電子顕微鏡で口元のケラチン質まで確認できたのに、だ。さらに別の標本は、孵化直後でまだお腹に卵黄を抱えた状態だったが、その時点ですでにエラはなかった。
スミソニアン博物館のアイストポッド類の赤ちゃんも同じ。頭の長さはわずか4.8ミリで、頭蓋骨もろくに固まっていない。でも、やっぱり外エラはない。
研究チームは、この“直発育”(幼生期を経ずに親と同じ形で生まれること)が、四肢動物の祖先の共通した特徴だったと推測する。魚の側にいるメガリクティス類の標本(全長約20ミリ)にも外エラがなかったことから、そもそも四肢が生まれる前から、このグループ全体が“幼生なき成長”をしていた可能性が高いという。
じゃあ、今のカエルやサンショウウオに見られるオタマジャクシ型のライフサイクルは、いつ生まれたのか? 同じメイゾンクリーク層から見つかった「テムノスポンディルス類」の標本には、はっきりと外エラがある。このグループは現代の両生類に近い系統だ。つまり、オタマジャクシ戦略は、最初の四肢動物が陸に上がった後、少なくとも4000万年以上経ってから、別途進化した可能性が高い。
従来の説では、水中で育つ幼生期があることで、水から陸への移行がスムーズになったと考えられてきた。しかし今回の証拠は、むしろ逆を指し示す。初期の四肢動物は、孵化した瞬間から完全にその環境に“コミット”していたわけだ。
論文の著者らは、オタマジャクシ型の変態は、むしろ「乾燥した季節的な環境で生き抜くための後付けの適応」だったのではないか、と控えめに示唆している。水辺に卵を産めないような厳しい環境で、一時的に水中で育つステージを設けることで、生き残りやすくなった、というストーリーだ。
「陸上進出の主役は、小さな大人の赤ちゃんだった」という発見は、教科書の一節を書き換えるかもしれない。もちろん、化石記録には限界があり、メイゾンクリーク層という限られた環境と時代の標本だけの話だという注意書きもついている。それでも、「カエルになる前はオタマジャクシ」という当たり前を、一度疑ってみるのも悪くないだろう。
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