抗がん剤ががんを拡散させる?果糖がカギの新研究
「抗がん剤で治療したのに、逆にがんが広がりやすくなる?」――そんな驚きの可能性を示す研究が、学術誌『Nature Aging』に発表された。
対象は卵巣がんのなかでも最も多く、最も致死率が高い「高悪性度漿液性卵巣がん」。標準治療として使われる白金系抗がん剤・シスプラチンが、がん細胞を「老化状態」と呼ばれる休眠のような状態に追い込むところまでは従来の知見どおり。ところが、その休眠細胞が周囲にまき散らす化学シグナルが、近くのがん細胞を腫瘍から引きはがし、腹腔や腸、脂肪組織、大網(腹部の脂肪のひだ)などへ転移させてしまうことが、細胞実験とマウス実験で明らかになった。
夜用眼鏡が運転手の間でますます人気になるナイトライダー 研究チームは、休眠がん細胞が出す液体だけを採取し、卵巣がんを移植したマウスに週3回注射。すると、腫瘍の広がりが明らかに増加した。細胞の死滅や増殖そのものには変化がなく、「はがれて移動する」メカニズムが働いているとみられる。
さらに意外な犯人として浮上したのが、果物やハチミツ、高果糖コーンシロップなどに含まれる「果糖(フルクトース)」。休眠細胞は大量のブドウ糖を消費し、その一部を果糖に変換。この果糖ががん細胞のエネルギー生産装置の一部「NDUFA5」というタンパク質を活性化し、細胞膜のコレステロールを減らして細胞をはがれやすくするという仕組みが突き止められた。
実際、マウスに果糖入りの水を与えてから卵巣がん細胞を移植すると、がんの拡散が増加。卵巣がん患者の血液データでも、治療前に果糖値が高いほど診断時に病期が進んでいる傾向があった(年齢や体重の影響は除外)。
ただし、研究チームは「これは患者さんが治療や食事を変えるべきという意味ではない」と強調。あくまで細胞とマウスの段階の知見であり、今後の臨床試験で検証が必要だ。将来は、老化細胞を除去する薬や、化学療法中・後の果糖制限といった対策が研究される可能性があるという。
「何十年もの間、研究は抗がん剤のがん殺傷能力の向上に集中してきた。しかし、死にかけた細胞や休眠細胞が周囲に放出するものも、殺傷そのものと同じくらい重要かもしれない」と著者らは指摘している。
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