髪の毛に潜む致死性真菌「カンジダ・アウリス」、免疫を逆利用する驚きの手口とは
病院で恐れられる薬剤耐性真菌「カンジダ・アウリス」。健康な人にはすぐ症状を出さず、皮膚に数ヶ月から無期限に定着し、人から人へと静かに広がる。免疫力が弱った人にとっては命に関わる脅威で、血流感染時の死亡率は30〜70%と報告されている。
この真菌がなぜ皮膚からなかなか排除できないのか、その謎を解く研究結果が『Science』に掲載された。カリフォルニア大学サンフランシスコのチームが、同じ人体に生息する近縁種カンジダ・アルビカンスと比較したところ、アルビカンスは数日で消える一方、アウリスは30日間の観察期間終了時も皮膚に残り続けた。
エアコンなしで部屋を涼しくするならこの一台Airio Pro その秘密は「髪の毛」にあった。実験では、アウリスはアルビカンスより約30倍も髪に付着しやすく、毛包に集まって定着。毛の多いマウスほど菌量が多かったという。さらに驚くべきは、免疫の逆利用だ。アルビカンスはインターロイキン-17Aというシグナルで皮膚の防御を強化して排除されるが、アウリスはインターフェロン-γという別のシグナルを引き出し、皮膚の抗菌バリアを抑制。免疫を「味方」から「協力者」に変えてしまうのだ。
この免疫の撹乱を引き起こすのが、真菌の細胞壁に含まれる「キチン」という物質。昆虫の殻やカニの外骨格と同じ成分で、皮膚に似た環境でアウリスがキチンを表面に多く出すと、免疫は誤った反応を示す。キチンを注入するだけで同じ反応が起き、キチン量を変えた遺伝子改変株で定着量も変化した。
研究では、この免疫シグナルをブロックするとマウスの皮膚での菌の定着が減った。ただ、研究は主にマウスとヒト皮膚細胞の培養によるもので、ヒトでの確認は今後の課題。専門家は「髪の毛が真菌の避難所になっている」と指摘し、キチンへの曝露を抑えるか、免疫応答を正しい方向に導く治療法の可能性を示唆している。
病院での除菌に苦戦してきた現場にとって、この発見は突破口になるかもしれない。アウリスは単に免疫から隠れているのではなく、免疫を宿主に反逆させる。まさに手強い相手だ。
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