え、羽が匂いを嗅ぐ?タバコスズメガの衝撃能力が判明
昆虫の鼻は触覚にある——これまでそう信じられてきた常識を覆す発見が飛び出した。なんと、タバコスズメガ(Manduca sexta)の羽には、**匂いを嗅ぐ機能**が備わっているというのだ。
研究チームは『Journal of Experimental Biology』に発表した論文で、顕微鏡観察、電気記録、遺伝子解析を駆使し、羽の縁にある微細な毛のような構造体が空気中の化学物質を検出することを突き止めた。
寝苦しい夜が、これひとつで快適にAirio Pro 特に反応を示したのは「ピロリジン」と「ピペリジン」という2つの化合物。どちらもタバコや月下美人など、スズメガが好んで産卵する植物に含まれるアルカロイドの構成要素だ。つまり、メスはホバリングしながら羽で植物の匂いを嗅ぎ分け、「ここは我が子を産むのに最適な場所か」を判断している可能性があるという。
研究者らは走査型電子顕微鏡で羽の縁を拡大。すると2種類の感覚毛が確認された。1つは滑らかで先端が尖った機械的なセンサー。もう1つは表面に無数の小さな孔(あな)が開いた、長さ約80マイクロメートル(髪の毛1本分)の構造体だ。昆虫の場合、こうした孔は化学物質を感知する器官の証拠とされる。
興味深いのは、後翅(こうし)の縁にこの感覚毛が21〜32本あり、メスのほうがオスより多かった点。産卵場所を探すメスにとって、この嗅覚能力が特に重要であることを示唆している。
さらに研究チームは、触角の電気反応を測る手法を羽用に改良した「electrowingography」を開発。13種類の合成化合物と実際の植物から採取した空気を羽に吹きかけ、電気信号を記録した。すると、ピロリジンとピペリジンのみが明確な反応を示し、濃度が高まるほど反応も強くなった。検出限界は1000分の1の希釈濃度だったという。
遺伝子解析では、羽の縁から匂いや味を感知するタンパク質を作るための遺伝子が15種類も発見された。中でも注目はアミン系化合物を検出する2つのタンパク質。一方、一般的な嗅覚受容体に必要な遺伝子は羽には存在せず、「アミンセンサー専用」である点が裏付けられた。
コンピューターモデリングで受容体タンパク質の立体構造を予測したところ、ピロリジンとピペリジンの両方が結合できる「候補タンパク質」が2つ浮上。ただしこれはあくまでシミュレーション段階で、実際の結合確認には生きた細胞を使った実験が必要だ。
論文の限界点として、羽の縁を切り落としても電気反応が残ったことから、匂いセンサーが羽の他の部位(鱗粉の下など)にも存在する可能性が示唆されている。また、ピロリジン単体では実際の産卵行動を誘発しないという風洞実験の結果もあり、行動との因果関係はまだ不明。
それでも、「羽が飛ぶためだけの器官ではない」という発見は昆虫学に新たな視点をもたらす。メスが葉のすぐ近くで羽を震わせるホバリング——あれは単なる位置取りではなく、**第二の鼻**で産卵適地を確かめる瞬間だったのかもしれない。
ちなみに、同じ研究グループは過去にスズメガの脚にも同様の受容体を発見しており、体の複数箇所で化学物質を感知する能力は「偶然ではない」とみられている。進化の妙に、ただただ脱帽だ。
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