火星の大気が一気に剥がれる瞬間を捉えた!太陽風の波が引き起こす“プラズマ雲”の正体
火星の大気がじわじわと宇宙に逃げている話は有名だけど、その中でも特に“ド派手なやつ”を科学者たちがついに捉えた。
太陽から吹き付けるプラズマの風「太陽風」が、火星の上層大気をまるで湖面に立つ波のように巻き上げ、そのままブワッと宇宙へ放り出す——そんな現象が実際に起きているらしい。しかも、その跳ね飛ばし方、一気に10倍から100倍ものガスを運び去るというから驚きだ。
エアコンなしで部屋を涼しくするならこの一台Airio Pro これまで火星の大気が減るルートは2つ知られていた。昼側でイオンが直接弾き飛ばされるパターンと、夜側で磁気の尾に巻き込まれて漂い去るパターンだ。今回『Science Advances』に発表された研究で、第3のルート「プラズマ雲」によるバースト的放出が確認された。
カギを握ったのは、NASAの火星探査機「MAVEN」と中国の「天問1号」のタッグだ。片方が太陽風の様子を上流で監視し、もう片方が火星大気の境界で何が起きているかを同時に見る——これができたのは今回が初めて。
天問1号が「太陽風に特に乱れはなし」と記録している間に、MAVENはプラズマ雲が発生して飛び去る様子をとらえた。つまり、外部からの衝撃ではなく、火星の大気と太陽風の速度差が生む「ケルビン・ヘルムホルツ不安定性」という波の現象が原因だと特定できたわけだ。風が水面にさざ波を立て、やがてうねりが渦になって水しぶきを舞い上げる——あれが大気レベルで起きている。
火星には地球のような全球的な磁場がないため、太陽風が直接大気にぶつかる。境界で高速の太陽風と低速の火星大気がぶつかると、渦が発生し、火星のイオンを閉じ込めたまま外へ投げ出す。1平方センチメートルあたり毎秒100万〜1億個ものイオンが爪先大の領域から抜け出している計算だ。
しかもこのプラズマ雲、想像よりずっと小さかった。以前は火星半径の2.5〜6倍と見積もられていたが、2機の探査機が約1900km離れて観測したところ、一方だけが雲を検出し他方は見逃した。つまり雲のサイズはその距離より小さい。発生場所も偏っていて、「太陽風の電場の向きによって、主に片側の半球で観測される」(筆頭著者・ボストン大学のChi Zhang氏)という。
数十億年前、火星は厚い大気と液体の水を持ち、生命が住める可能性があったと考えられている。「どうやって今のような寒く乾いた星になったのかを理解することは、惑星環境の進化を知る上で重要です」(Zhang氏)。現在の大気損失の主因は太陽光による分子分解だが、過去の太陽がもっと活発だった時代は、今回見つかった波による放出が効いていた可能性がある。
この現象は火星だけの話ではない。共著者のChuanfei Dong氏は「強い磁場を持たない天体ならどこでも起こり得る。一部の系外惑星も含めて」と指摘する。MAVENの後継となるNASAの「ESCAPADE」ミッションも、この謎をさらに追う予定だ。
なお研究チームは、プラズマ雲の持続時間や正確なサイズの統計データはまだ不十分と認めている。渦が完全に巻き込まれているのか、内部で磁気リコネクションが起きているのかも未確認。それでも、2機の探査機が同時に捉えたこの“宇宙の波しぶき”は、火星の歴史を読み解く新たな手がかりになりそうだ。
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