地下650mの岩石でキノコが大繁殖、689種も発見
「地下深くは菌類がいない」――長年そう信じられてきた常識が、今回の研究で覆された。ミシガン大学のチームが、同州北部の地下約200〜500メートルにあるガス井から水を採取・分析したところ、なんと689種類もの菌類が検出されたのだ。しかもそのうち13種は、既知のどの種とも一致しない新種候補。
研究を率いたクイン・ムーン氏(博士課程)は「地下深くは複雑な生命にとって過酷だという考えに異議を唱える結果だ。条件が整えば、真核生物がかなりの数存在しうる」と話す。
夜間運転用メガネが今ドライバーに急増中ナイトライダー 具体的には、アントリム頁岩と呼ばれる約3億5000万年前に形成された地層から、80リットルずつの「古代の閉じ込め水」を採取。蛍光染色で細胞を数え、遺伝子解析で種類を特定し、さらに培養も行った。その結果、菌類の細胞数は1ミリリットルあたり約4200〜6800個。これは海水1滴と同程度の密度で、オリンピックサイズのプールに換算すると12兆個を超える計算になる。
バイオマス比で見ても、細菌4.7に対して菌類1という割合で存在。もはや「微量」ではなく、地下の微生物生態系で確かな役割を担っている可能性が高い。
特に注目すべきは、これらの菌類が何をしているかだ。研究チームは、菌類が岩盤中に閉じ込められた古代の炭素を分解し、メタン生成古細菌が利用できる化合物に変換している可能性を提唱。ただし、これはあくまで仮説で、直接の証明には至っていない。
検出された菌類の多くは、地上では木材や石炭を分解することで知られるアガリコマイセテス科やドティデオマイセテス科に属する。地下でこれほど豊富に見つかったことは、彼らが地下でも同様の分解活動を行っていることを示唆する。
培養に成功した205株のうち、1株(Teichospora sp. QM01)は詳細な遺伝子解析の結果、既知の全近縁種から明確に分岐していることが判明。その最も近い種は地上で木質植物を分解するというから、地下環境に特化した進化を遂げた可能性がある。
論文の上級著者であるティム・ジェームズ氏(ミシガン大学標本館菌類学芸員)は「菌類は地下の炭素循環と隔離のモデルに組み込まれる必要がある」と強調。これまで地下の炭素動態モデルからは除外されてきた菌類に、ようやく「席」が与えられようとしている。
ただし研究には限界もある。調査は単一の地層に限られており、採水方法が付着性の微生物を過小評価している可能性や、培養が酸素存在下で行われたため無酸素性の菌類を見逃している恐れがある。また、菌類の炭素量換算には海洋由来の式を使っているため、地下深部にそのまま適用できるかは未検証だ。
それでも、約90%の地球有機炭素が地下に眠る中、菌類の役割を無視できなくなったのは確か。論文は「有機炭素変換に関わる分類群とメカニズムのより包括的な理解が、温室効果ガス排出管理の予測モデルを洗練させる」と結んでいる。
ちなみに、培養された菌類はすべてミシガン大学標本館で保管され、地下深部由来の菌類培養コレクションとしては世界初の公開コレクションとなった。今後の研究で、石炭やシェール、さらにはプラスチックの分解能力がテストされる予定だ。
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