服に「過去」があると、映像がもっとリアルになる。衣装デザイナーが語る古着の力
「新しいシャツは、あまりにキレイすぎて、物語を語れない」。そう語るのは、コスチュームデザイナー兼スタイリストのジャッキー・ナイト。彼女の仕事は、CMやミュージックビデオ、映画など多岐にわたる。インスタグラム、アップル、アマゾン、フォード、OVOといった世界的ブランドの衣装も手がけ、ドレイクのMV(視聴回数1100万回以上)にも関わった実力者だ。
そんな彼女が、なぜ古着やリサイクルショップの服にこだわるのか。理由は単純に「古い方がいい」からではない。彼女が言うには、「中古品にはすでに人生が宿っている。その歴史が、新品を買うだけでは決して生み出せない“質感”をもたらしてくれる」のだという。
デニムに合う。履くだけで「ちょいワル」Tapoon 例えば、ベンジャミン・ムーアのキャンペーンでは、家族の時間の経過を衣装で表現する必要があった。彼女は「何年もの間の家族を描くとき、服が今朝届いたばかりのように見えてはダメだ」と語る。袖口が少しすり減ったセーターや、5回の冬を乗り越えたように見えるコート。そういった「使い込まれた感」が、画面の中の世界を“セット”ではなく、確かに息づいている場所に見せるのだ。
「服が完璧すぎると、その世界から引き離されてしまう」と彼女は言う。「服は説明せずに、見る人に情報を与えるのが好き」。まさに職人技だ。
しかし、彼女のこだわりは、単なる映像表現のためだけではない。撮影現場では、大量の衣装が買われ、加工され、撮影され、返却され、しまい込まれ、あるいは捨てられる。この業界の廃棄物問題を、彼女は小さな問題とは思っていない。「サステナビリティはクリエイティビティを損なうものではない。むしろ、白紙から始めるより、作品を面白くしてくれる」。
彼女のビジョンは、スクリーンの外にも広がる。将来的には、スタイリング業界内で寄付型チャリティを立ち上げ、撮影で使われた衣装を必要としている人々に届けたいと考えている。特にカナダの寒い地域では、冬物コートを必要としている人がいる。「自分のコレクションにも、もう必要ないけど誰かの役に立つものがある。撮影が終わった後も、衣装が人々のために生き続ける方法を模索したい」。
「ファッションは証拠だ。それが人々の生き方を示す」。彼女の言葉には、服を単なる消耗品として扱わない、強い信念が感じられる。映像の世界で生きた服を選ぶことは、同時に、その服の次の人生を考えることでもあるのだ。
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