仏の基礎×米の速度、両方持つ女性起業家が語る「才能流出じゃない」
「フランスとアメリカ、どちらかを選ぶのは間違った問いです。大事なのは、両方を行き来できるだけの強いキャリアをどう築くかです」——そう語るのは、仏系スタートアップの米国進出を支援するマルゴー・ブノワさん。彼女のキャリアは、ヨーロッパの優秀な人材がアメリカに流出するという単純な図式では語れない。
ブノワさんはフランス・アメリカ両方で活動するスタートアップオペレーターであり、エンタープライズ向けGo-to-Market戦略の構築を専門とする。彼女はニューヨークとパリを拠点に、フランスで培った技術力や規律を、よりスピード感のあるアメリカ市場で試してきた。
デニムに合う。履くだけで「ちょいワル」Tapoon 「私は自分の道をフランスを捨てたとは思っていません。フランスが与えてくれたものを土台に、異なるスピードで動く市場でその基盤を試しているんです」
彼女の経歴は多彩だ。UCLでバイオテクノロジーと起業を学び、フランスで臨床研究の経験を積んだ後、フランスのエコシステム内で製薬マッチングプラットフォーム「Pharmatch」を共同創業。パリ・サクレー20やWILLAインキュベーターに選抜され、X-HECアントレプレナーズのプログラムにも参加した。
こうした環境で彼女が学んだのは、物事を深く考え、アイデアを守り抜き、問題の本質を尊重する姿勢。これはフランスの強みだという。
一方、アメリカ市場は別の筋肉を鍛えてくれた。フランス系スタートアップの米国進出における初の営業担当として、大手医療システムとの商談を任された時、彼女はカルチャーショックを受ける。取引のスピード、期待値、新しい技術への受け入れ姿勢がまるで違ったからだ。
「アメリカのスピードは単なる性格特性ではなく、市場の特徴です。私が移住して単純に速くなったわけじゃない。周りの市場がそれを要求したんです」
アメリカ市場は学習サイクルを圧縮し、理論に隠れている時間を与えてくれない。不確実性が残るうちに決断を迫られる。ブノワさんはそのリズムに適応する必要があった。
「アメリカに来たら、ヨーロッパでの信用が自動的に移転すると思ってはいけません。その市場なりのルールで信頼を得る必要があります」
だからこそ、彼女のアドバイスは逆説的だ。「最強のオペレーターは両方を維持している。フランスの規律を基盤に、アメリカの市場ペースを試練の場として、両方のコミュニティと本当の意味でつながっている」
フランスのスタートアップエコシステムも決して弱くない。Station FやLa French Tech、インキュベーター、創業者ネットワークなど、初期段階の支援は充実している。ブノワさん自身もその恩恵を受けてきた。しかし彼女は、その後のフェーズ、つまり「企業が大規模なバイヤーを前にどれだけ素早く動けるか」という点で差が出ると指摘する。
「フランスの才能がアメリカに行くのを『損失』と捉える人もいますが、私はそれぞれのエコシステムが何を得意としているのか、そして人がその両方をどう活用できるかを考える方が面白いと思います」
彼女の存在は、フランスが人材を保持できなかった証拠ではない。フランスの訓練が、スピードを重視する市場に出会った時にどれだけ適応し、成長できるかを示す生きた証明なのだ。
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