がん細胞を“食べ過ぎ”で倒す新薬、マウス実験で腫瘍縮小に成功
がん細胞って、とにかく糖をむさぼり食う。この「ワールブルク効果」と呼ばれる性質を逆手に取ろうと、これまで多くの研究者が「糖を遮断して飢え死にさせよう」と試みてきた。ところが、がん細胞は賢いもので、一つの燃料を止められるとすぐ別の栄養源に切り替えてしまう。
そこでテキサス大学とワシントン大学のチームが考えたのは、まったく逆のアプローチ。糖の代謝を止めるどころか、むしろアクセル全開にしてやり、その代わりに「予備燃料」である脂肪酸の燃焼を同時にブロックするというものだ。
エアコンなしで部屋を涼しくするならこの一台Airio Pro 開発された化合物は「XJ-4-85」。実は二つのパーツからできていて、一つ目はがん細胞内の糖代謝の鍵タンパク質「PFKL」にピタリと結合し、その働きを過剰に活性化。すると細胞内に糖の分解産物が異常に蓄積する。そして二つ目のパーツ「XJ-4-119」がミトコンドリア内の脂肪酸取り入れ口「CPT2」をふさぎ、脂肪を燃料として使えなくする。つまり、糖でブーストかけといて、脂肪で逃げる道を塞ぐ、という二段構えの作戦だ。
この分子の精度は異常に高い。約9000カ所あるタンパク質の結合候補サイトのうち、実際に結合したのはPFKLのたった一カ所だけ。さらに放出されたXJ-4-119も、7000以上のタンパク質からたった一つのCPT2を正確に狙い撃つ。研究者たちは、生きた細胞内で糖分解産物がリアルタイムで急増する様子を特殊センサーで観察することにも成功した。
実際にメラノーマ(皮膚がん)を移植したマウスで試したところ、2週間の毎日投与で、XJ-4-85を投与したグループの腫瘍は他の治療群よりも明らかに小さくなった。しかもマウスに苦しそうな様子や体重減少は見られず、短期的には副作用が少ない可能性を示唆している。
「PFKLを遺伝子操作で取り除いたがん細胞」で実験すると、薬の効果はほぼ消滅。腫瘍の大きさは約5倍になった。これにより、この薬の効き目の大部分がPFKLの活性化に依存していることが確認された。CPT2を除いた場合も効果は減ったが、PFKLほど劇的ではなかった。
ただし、あくまでマウスと細胞レベルの話。人間での試験はまだ行われておらず、長期の安全性や耐性が生じる可能性は未知数だ。研究者自身も「なぜPFKLの活性化だけで腫瘍が小さくなるのか、メカニズムは完全には解明できていない」と認めており、ダブルノックアウト実験や、より薬らしい形に改良した化合物が必要だとしている。
それでも、従来の「飢えさせる」発想を真っ向から覆すこのアイデアは、がん治療の新しい可能性を切り拓くかもしれない。アクセルとブレーキを同時に踏むような乱暴なやり方だが、もしかするとこれこそががん細胞の想定外の弱点を突く一手になるのかも。今後の研究の進展に注目だ。
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