規制しようとしたら銃が爆売れ。米オレゴン州で起きた逆説
「銃を規制するぞ」と決めたら、逆に銃がめちゃくちゃ売れた——そんな皮肉な現象がアメリカ・オレゴン州で起きた。
2022年11月、オレゴン州の住民投票で「Measure 114」が僅差で可決された。内容は、銃購入に安全講習と許可証を義務づけ、所持弾数の上限を10発に制限するというもの。いわゆる“銃規制強化”の流れだ。ところが、この法律は成立直後に裁判所によって施行停止。結局一度も発動されることはなかった。
寝苦しい夜が、これひとつで快適にAirio Pro しかし、問題はその前に起きていた。投票前後の数週間、州内の身元調査件数(銃購入の代わりとなる指標)が通常比157%も跳ね上がったのだ。あるブラックフライデーには、たった1日で約5000件もの調査が行われたという。
この現象を分析したのが、オレゴン州立大学とオレゴン大学の経済学者チーム。彼らはこの逆説的な効果を「スティール・パラドックス」と名付けた。つまり「規制しようとしたら、かえって銃が流通してしまった」というわけだ。
研究チームは、Measure 114がなければどうなっていたかを統計モデルでシミュレーション。実際のデータと比較した結果、驚くべきことがわかった。購入の先送り(いわゆる「収穫」効果)は需要増の30%未満に過ぎず、残りの70%は純粋な新規需要だったのだ。つまり「今のうちに買わなきゃ」という焦りが、本来は買わなかった人々までも購入に駆り立てた。
しかも、この熱狂は地域によって偏っていた。Measure 114に反対票を投じた郡(30郡)の方が、賛成多数の郡(6郡)よりも人口あたりの購入増加率が約50%高かった。特に反対が強い地域では、週に住民の約1%が銃を購入した計算になる。反対派が人口の54%を占めるにもかかわらず、州全体の増加分の70%を占めたというから、まさに「失う恐怖」が購買を加速させた格好だ。
研究では、この Measure 114 による買い急ぎ効果は、オバマ大統領就任時の2008年と比較して6倍以上、サンディフック小学校銃乱射事件後と比べても3倍以上の規模だったとされる。つまり、暴力事件がなくても、規制の“予告”だけでこれだけの需要が生まれるということだ。
追加で購入された銃は、仮にMeasure 114が施行されたとしても、その効果が現れるまでに1年以上かかると推定されている。63,000件もの過剰な身元調査の影響を打ち消すには、4年近くかかる計算だ。
研究者たちは「許可制が長期的に暴力を減らす可能性は否定しない」としつつも、「知名度の高い投票で可決し、実施までに猶予期間がある政策は、施行前に自らの目的を損なうバースト需要を引き起こす」と警鐘を鳴らしている。
規制しようとしたら、規制したくない人たちが我先に銃を買い占めた——この「スティール・パラドックス」は、銃社会アメリカのジレンマを如実に映し出している。
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