脳内で流れる「きらきら星」を信号から再現、正答率26.7%の衝撃
「あの曲、頭から離れない」——そんな経験、誰にでもあるだろう。口ずさんでもいないのに、脳内でメロディーが繰り返し再生されるあの現象。実はその「内なる音楽」、脳の電気信号からある程度形を読み取れることが分かった。
韓国のソウル大学や梨花女子大学などからなる研究チームは、てんかん治療のために脳表面に電極を埋め込まれた患者10人を対象に、被験者が「頭の中で歌う」メロディーの輪郭を解析することに成功。その成果は学術誌『eNeuro』に掲載された。
デニムに合う。履くだけで「ちょいワル」Tapoon 実験では、被験者はまず「Yankee Doodle」や「きらきら星」といったおなじみの童謡を聴き、続く2小節を頭の中で想像し、その後実際にハミングした。曲は3種類の異なる調(キー)で提示され、脳が単に音の高さを追っているわけではないことを確認できるようにした。テンポは1分間に120拍、各音符は0.5秒間という厳密な条件下で、視覚的な合図でペースをコントロール。想像中は「一切体を動かさない」よう指示されたが、筋電図の記録は行われなかったため、ごくわずかな動作の混入は否定できないという。
研究のカギは「絶対音程」ではなく「相対音程」を追った点にある。「ド・レ・ミ」のように、音と音の上下関係だけに注目したのだ。すると驚くべき結果が飛び出した。6つの選択肢から正しい音を当てる課題で、ランダムに推測した場合の正答率は16.7%なのに対し、脳波モデルは平均26.7%を記録。最も成績の良い被験者では31.2%に達した。逆に「絶対音程」を当てさせようとすると、まったくの偶然以下に落ち込んだ。つまり脳は、メロディーを「ドの高さ」ではなく「ドからレへの上がり幅」という形で記憶しているらしい。
個々の音符の予測は完璧とは言えないものの、それらをつなぎ合わせて再構成されたメロディーは、元の曲の「上がり下がり」を驚くほど正確にトレースした。たとえ一音外しても、全体の形は合っている——そんな不思議な結果が得られたという。
信号の読み取りに貢献した脳領域は主に二つ。音や言語の処理に関わる「上側頭回」と、左半球の運動関連領域だ。研究チームは、後者が活躍した理由について「本を読むときに無意識に口が動くように、頭の中で歌うときにも喉の筋肉が微かに動いている可能性がある」と推測している。
ただし、これはあくまで「概念実証(proof of concept)」の段階。使われた曲はすべて被験者が何度も練習した既知のメロディーで、即興や初めて聴く曲での再現はまだ難しい。研究者らは「今回の結果は、脳がメロディーを固定された周波数ではなく、音の関係性として記憶しているという考え方を支持するものだが、決定的な結論ではない」と慎重だ。
一音単位の精度は控えめで、電極の位置も患者の治療優先で決まっているため個人差が大きく、解析に使える周波数帯域も限られている。さらに筋活動を記録していないため、想像中に本当に体が完全に静止していたかは断言できない。
それでも「誰もが無意識に口ずさむ脳内BGM」に、科学のメスが入ったことは間違いない。次はどんな曲が解読されるのか——頭の中で流れるあのフレーズ、実はもうすぐ外に漏れ出すかもしれない。
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