ソルガムのリグニンが骨を再生?実験室でヒドロキシアパタイト結晶形成に成功
家畜の飼料としてしか注目されてこなかったソルガムに、まさかの隠れた才能が発見された。ヘブライ大学の研究チームが、この植物の茎に含まれる「リグニン」という成分を加工し、骨の修復に使えるかもしれない素材を作り出すことに成功したのだ。
リグニンは、植物の細胞壁を構成する有機高分子で、セルロースに次いで地球上に豊富に存在する天然ポリマー。農場や製紙工場から大量に廃棄されているが、今回の研究ではこれを骨や歯の強度を支えるミネラル「ヒドロキシアパタイト」の結晶に変化させることに成功。実験室のシャーレ内では、骨を作るもととなる細胞(プレオステオブラスト)の成長も促進したという。
寝苦しい夜が、これひとつで快適にAirio Pro 研究チームは、ソルガムから抽出した2種類のリグニンを比較した。一つは通常のソルガムから得られる「シリカ(ケイ素)を多く含むリグニン」、もう一つはケイ素の吸収が少ない変異株から得られた「シリカが少ないリグニン」だ。
この差は歴然だった。シリカ豊富なリグニンを擬似体液に浸したところ、わずか3日で表面にカルシウムが集まり始め、14日目にはリンも加わり、さらに2週間後には骨や歯の主成分であるヒドロキシアパタイトの結晶が形成されたのだ。一方、シリカの少ないリグニンでは28日間経っても結晶は見られなかった。
研究チームは、シリカ豊富なリグニンに多く含まれる「フェノール性水酸基」という化学構造が、カルシウムを引き寄せる分子フックのような役割を果たしていると推測している。
骨形成細胞との相性も良好だった。低濃度(25〜50μg/mL)では細胞の増殖が促進され、500μg/mLまでは毒性を示さなかった。ただし1000μg/mLの高濃度ではシリカ豊富なリグニンは毒性を示したものの、シリカを25%含む複合素材は無毒だった。
分解性のテストでも、シリカ豊富なリグニンは3週間で約17%の質量を失い、シリカ複合体はさらに速く20%以上分解。将来的に骨組織と置き換わる足場材料として期待が持てる。
論文の筆頭著者である博士研究員のスリナス・パラクルティ氏は、「植物は強い構造を作るための洗練された戦略を進化させてきた。それを再生医療に応用できないかと考えた」とコメント。共著者のリフカ・エルバウム教授も「植物はすでに、材料科学者が悩んでいる多くの工学的課題を解決している。リグニンとシリカの自然のパートナーシップから学ぶことで、生体適合性のある持続可能な材料を開発できた」と語っている。
ただし、これはあくまで試験管レベルの初期段階の研究成果。動物実験や臨床試験は行われておらず、実際の骨修復には血流や免疫反応、力学的負荷など、シャーレでは再現できない要素が関わってくる。著者らも「動物実験が次の必須ステップ」と明記している。
それでも、農産廃棄物を有効活用できる可能性は大きい。もし実用化されれば、動物由来の骨移植材に代わる、よりサステナブルな選択肢となるかもしれない。リグニンがまさか骨の再生に貢献する日が来るとは、ソルガム自身も驚いているだろう。
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