EVバッテリーのコバルトにウラン混入、2000〜5000トンが未申告のまま輸出
電気自動車(EV)のバッテリーに欠かせないコバルト。その約3分の2を供給するコンゴ民主共和国(DRC)から、なんと大量のウランがコバルトにまぎれて輸出されていた――そんな衝撃的な研究結果が『Nature Communications』に掲載された。
プリンストン大学とウィスコンシン大学マディソン校の研究チームによると、2000年から2024年の間に、DRCから出荷されたコバルトに含まれる形で、2000〜5000トンの天然ウランが国外に流出した可能性があるという。ところが、そのうち国際的な核セーフガード(核物質の管理体制)に正式に申告されたのは、わずか10%にも満たない。残りのほとんどは、まったくの“オフレコ”状態で世界を渡り歩いていることになる。
寝苦しい夜が、これひとつで快適にAirio Pro なぜこんなことが起きるのか。理由は化学的な“相性の良さ”にある。コバルトの原料となる鉱石を砕き、硫酸に浸すと、コバルトとウランはほぼ同じ酸性度で溶け出す。その後、石灰を加えて酸性度を下げると不要な金属が沈殿するが、ウランはそのまま残る。ウランを除去するには、リン酸を追加したり特殊なフィルターを使ったりする追加工程が必要で、当然コストがかかる。研究チームが31の鉱山の輸入記録を調べたところ、ウラン除去に必要なリン酸を定期的に輸入していたのはたった3カ所。他の除去方法を導入した施設は皆無だった。2024年時点で、ウラン除去処理が行われた形跡のあるコバルトは、輸出量のわずか5分の1程度だったという。
核セーフガードのルールは「岩の中に埋もれたウランは、実際に掘り出されて特定されるまでカウントしない」というもの。そのため、コバルトに内包されたウランは国境を越えても帳簿に載らず、精製所がわざわざ抽出して報告しない限り、誰にも気づかれない。実際にそれが確認されたのは、フィンランドの化学プラントが2010〜2017年にDRC産コバルトからウランを抽出し販売したただ1件のみ。同じ期間、DRCはウラン輸出ゼロと報告していた。
輸出されたコバルトの約65%は、世界のコバルト精製を牛耳る中国企業が買い取っている。中国は核兵器非保有国からの年間10トン以上のウラン輸入を報告する義務を負っているが、研究チームの試算では、DRCのコバルトに含まれるウラン量は2010年以降毎年この基準を超え、2024年には報告ラインの50倍以上に達していたという。
コバルトとウランが同じ場所に眠るのは偶然ではない。数億年前の地殻変動で地層が折り重なり、両方の金属が同じ断層沿いに濃縮された。最も豊富な鉱床では、ウランがコバルト結晶の重量の3%を占めることもあるという。
研究チームは地質図や既存研究のウラン測定値、20年分の鉱山レベルの貿易データを組み合わせ、化学モデルでウランの挙動をシミュレート。最も控えめな想定でも、1000トン以上のウランが輸出されたと結論づけた。
すでに過去の研究では、これらの鉱山周辺の住民や、手作業でコバルトを掘る子どもを含む鉱山労働者の体内から高濃度のウランが検出されている。廃棄物の山からウランが溶け出し、土壌や水を汚染するリスクも指摘される。坑道内で働く労働者は、ウランの崩壊で放出される放射性ガス「ラドン」を吸い込む危険にもさらされている。
EVブームでコバルト需要が爆発的に増え、DRCの生産量は年間15万トンを超えたが、規制は追いついていない。2006年の政府命令でコバルトは粉末ではなく精製金属として輸出するよう定められたが、国内に大規模精錬所を動かす電力が不足し、ほとんど守られていない。2002年の法律でウランは規制物質に指定されたが、コバルトの積荷に対するウランの検査や追跡は今も行われていない。
DRCのコバルト採掘は、児童労働や劣悪な労働環境で長年批判されてきた。今回の研究は、EVのバッテリーを支えるサプライチェーンが、知らぬ間に核物質を運び、国際的な管理体制の穴を突いていたという新たな問題を浮き彫りにした。研究者たちは「解決策は複雑ではない。ただ地味なだけだ」と語る。必要なのは、定期的な検査、正直な報告、安全な廃棄物処理、そして働く人々の保護だ。
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