まさか日差しで「量子もつれ」が作れるなんて…常識覆す実験成功
「量子もつれ」を作るにはレーザーが必要——それが物理学者の長年の常識だった。ところが、ドイツ・マックス・プランク光科学研究所の研究チームが、なんと「ただの太陽光」で量子もつれを起こすことに成功した。発表された論文によると、専用の円錐形ソーラーコンセントレーターで集めた日光を特殊な結晶に通すと、レーザー並みの品質で光子のペアがもつれ合うのだという。
量子もつれとは、2つの粒子がどんなに離れていても、一方を測定するともう一方の状態が瞬時に決まる現象。次世代の暗号通信や量子コンピューターの根幹をなす技術だが、これまで光源にはレーザーが不可欠とされてきた。レーザーは電力消費が大きく、過酷な環境で扱いにくいという弱点があった。
これは高圧洗浄機と同等の強さで、電力不要BlastPro 実験は屋外で実施。フェンスで風を遮り、黒いテントで電子機器を覆い、さらに遮光ボックスで検出器を保護する念の入れよう。3日間にわたって行われ、毎回安定した結果が出た。生成された光子ペアは、もつれの品質を測る標準テストで0.9台後半(最大1.0)のスコアを記録。これは典型的なレーザーシステムと同等だという。さらに「ベルテスト」という量子もつれの決定的な証明もクリアし、偶然の一致ではない本物のもつれであることが確認された。
研究チームのカギとなった発想は、「必要なのは偏光の秩序だけで、波長や方向の乱雑さは問題にならない」という点。太陽光は混沌としているが、もつれさせる対象を偏光に絞れば、その乱雑さは障害にならなかった。集光レンズとフィルターで適切な波長だけを取り出し、光ファイバーで結晶に導く仕組みだ。
もちろん、現状では完全に電気不要というわけではない。結晶の温度調整と太陽追尾のために電力を必要とする。しかし研究者らは、パッシブな追尾機構の採用などでさらなる省電力化は可能と見ている。特に恩恵が大きいのは人工衛星。太陽同期軌道に乗せれば、追尾機構すらほぼ不要になる。レーザーを積むよりも格段にシンプルで安価な量子通信衛星が実現できる可能性がある。
さらに、太陽光のような「少し乱れた光源」は、大気の揺らぎに対してレーザー光よりも強いという先行研究もあり、自由空間での量子信号伝送にも適しているという。研究チームが指摘したように、今回の不完全さは「太陽光そのものの限界ではなく、光学部品の研磨ムラに起因する」もの。もっと精度の高い装置を作れば、品質はさらに向上するはずだ。
人類は太古から太陽の恵みで文明を築いてきたが、まさか量子技術の世界でもその恩恵にあずかる日が来るとは。電力が不足する極地や宇宙空間で、太陽の光だけで量子暗号鍵を生成する——そんなSFじみた未来が、意外とすぐそこまで来ているのかもしれない。
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