人類のDNAに潜む「幽霊祖先」、正体は5000世紀前の未知の種
「人間のゲノムには幽霊が潜んでいる」。そんなミステリーめいた話が、科学誌『Science』に発表された。
ネアンデルタール人やデニソワ人なら聞いたことがあるだろう。現生人類は彼らと交配し、そのDNAを少しばかり受け継いでいることは、すでに知られている。ところが今回、カリフォルニア大学バークレー校などの研究チームが開発した新ツール「TRACE」が、まったく別の“第三の古代人”の痕跡を暴き出したのだ。
エアコンなしで部屋を涼しくするならこの一台Airio Pro その名も「ゴースト(幽霊)祖先」。骨も化石も、ましてやゲノムすら見つかっていない、完全に未知の系統だ。
TRACE(Tracking Archaic Contributions via ARG Estimationの略)は、現代人のDNAに刻まれた家系図を読み解き、「これは直接の祖先には見えないほど古くて変だぞ」という遺伝子断片をかぎ分ける。従来は交配の証拠を掴むには相手種のゲノムが必要だったが、このツールは骨すら不要。シミュレーションでは92%の精度で正解を当てたという。
その結果、世界中のあらゆる集団――西アフリカ、東アフリカ、ヨーロッパ、オセアニア――で、ゲノムの0.5〜1.1%がこの“幽霊”に由来することがわかった。ネアンデルタール人やデニソワ人とも同じくらい似ているが、どちらともはっきり異なる。分岐したのは50万年前以上と推定される。
さらに驚くのは、「古代人のDNAは入っていない」とされてきたゲノム領域(通称アルカイック・デザート)にも、この幽霊祖先のDNAがたっぷり残っていた点だ。たとえば言語に関わる遺伝子がある7番染色体の砂漠地帯では13.3%、3番染色体では20%ものピークが検出された。つまり、ネアンデルタールやデニソワだけが排除されたのであって、「よそ者のDNAは一切お断り」ではなかったらしい。
オセアニア(パプアニューギニア、バヌアツなど)の92人のゲノムからは、さらに古い「超古代系統」の痕跡も浮かび上がった。現生人類の祖先から約177万年前に分かれた系統で、デニソワ人がすでにそのDNAを持っていて、間接的に現代人に伝わった可能性がある。候補として挙がるのはホモ・エレクトスだが、あくまで仮説の段階だ。
「人類の歴史は、きれいな家系図よりずっと入り組んでいる」。研究チームはそう語る。サハラ以南のアフリカから出る前にすでに交配があったとみられ、現生人類は単独で進化したわけではなさそうだ。
ただ、TRACEにも限界はある。推定された家系図の精度次第では正しい断片を半分も拾えないケースもあり、今回の数値は控えめな下限値だと研究者らは認める。アフリカの2万年前より古いゲノムは存在しないため、比較も難しい。
それでも、骨がなくても祖先の“声”を聞けるようになったのは確か。自分たちの遺伝子の中に、名前も顔も知らない親戚が潜んでいる――そう思うと、ちょっとロマンがある話じゃないか?
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