マッコウクジラのオス、ジェット機よりデカい声で“恋のささやき”をしてた
深海の闇の中で、マッコウクジラのオスがジェット機の離陸音よりデカい声を、わざと出しているかもしれない。しかもそのリズム、めちゃくちゃ遅い。
ニューヨーク科学アカデミー紀要に発表された研究によると、オスのマッコウクジラが出す「スロークリック」と呼ばれる信号が、水中200デシベル超えを記録。これは哺乳類が発するコミュニケーション音としては世界一の大音量だ。水中デシベルは空気中とは単純比較できないが、とにかく「めちゃくちゃうるさい」というのは間違いない。
デニムに合う。履くだけで「ちょいワル」Tapoon ただ、研究者たちが腰を抜かしたのは音量だけじゃない。そのリズムだ。スロークリックは3秒から10秒に1回という、信じられないほどゆっくりしたペースで、しかも正確無比の規則正しさで刻まれる。鳥のさえずりやサルの鳴き声は通常1秒に1回以上の速さだが、スロークリックはその10分の1から3分の1の遅さ。それでいて、人間なら3分の2秒以上の間隔が空くとリズムを感じ取れなくなるのに、クジラは2秒から20秒超の間隔をキープする。どうやって体内時計を合わせているのか、謎は深まるばかりだ。
研究チームは、セーシェル沖で成熟したオス1頭から65回のスロークリックを収録し、音源での音量を測定。さらにノルウェー、スリランカ、スコットランド、セーシェルの6カ所から1839回のクリックを集め、リズムの解析を行った。モデル計算によると、この音は水深や水温、海底の地形にもよるが、理論上は約70キロ先まで届く可能性がある。小さな国なら端から端まで一発でカバーできる距離だ。
では、誰に向けて叫んでいるのか?最も有力な説は「オス同士のケンカ避け」。マッコウクジラのオス同士は時々激しく戦い、年を取ったオスには頭の傷や折れた顎の跡がざらにある。遠くから互いのサイズを音で測り合えれば、無駄な衝突を減らせる。クリックのパルス間隔は鼻の大きさに依存するため、近くで聞けば相手の体格が分かるらしい。遠くでは細かい情報は失われるが、リズム自体に何らかのメッセージが乗っている可能性はある。
ただし、研究チームは慎重だ。音源レベルの測定はたった1頭のデータに基づいており、すべての個体に当てはまるとは限らない。また、70キロ先まで届くというのはあくまでモデル上の推定値で、実際に別のクジラがその音を受信した証拠はない。なぜあんなに正確なスローリズムを刻めるのかについても、心拍に同期している説や、海底からのエコーを利用している説など、まだ仮説の段階だ。
「人間の耳には聞こえない深海のラブソング」というロマンチックな話にしたいところだが、研究者たちは「交尾か、縄張りか、それとも別の何かか」と、今後の現地調査を待っている。とにかく、オスのマッコウクジラは海の向こうまで響き渡る声で、完璧なタイムキープをしている。その事実だけでも、十分に胸が熱くなる話じゃないか。
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