16Hz以下の「超低音」、耳はどう感知する?新説が示す電気信号ルート
「聞こえない音」って、実は存在しないと思ってない?でも、風力発電の低いブーンという音に悩まされる人と、まったく気にしない人がいるのはなぜか。その謎を解くカギが、どうやら耳の中にあるらしい。
ノルウェー科学技術大学のカルロス・フラード氏とユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンのトルステン・マルカルト氏が、科学誌『Scientific Reports』に発表した研究によると、人間は通常「音」として認識できない16Hz以下の超低周波音(インフラサウンド)を、従来とは別のメカニズムで感知している可能性があるという。
寝苦しい夜が、これひとつで快適にAirio Pro 耳の奥にある蝸牛(かぎゅう)は、らせん状の構造で振動を神経信号に変える器官。ここには2種類の感覚細胞があって、一つは「液体の速度」に、もう一つは「内部の仕切りの動きの大きさ」に反応する。通常の音は速度に敏感な細胞が主に働くが、16Hzを下回ると、動きの大きさに反応する細胞が作り出す電気信号が神経活動の主役に変わると予想されている。
研究チームは11人の被験者(25~50歳)で実験。5Hz、15Hz、30Hzの音を聞かせたときの聴覚閾値(聞こえ始める音量)と蝸牛の動きを測定したところ、15Hzを境に聴覚のカーブが急激に変化。15Hz以上では通常の動き依存の仕組みが、それ以下では電気的な仕組みが優勢になるという明確なパターンが見えたんだ。
さらに7人の被験者を使った第2実験では、500Hzのマスキング音(邪魔な音)を流すと、4Hz、8Hz、16Hzといった超低周波の検出だけが特に悪化。平均で約3~6デシベルも聞こえにくくなった。500Hzの音は物理的に蝸牛の奥まで届かないので、これは電気信号を抑制した結果だと解釈されている。過去の動物実験でも、500Hzの音が超低周波に対する蝸牛の電気ポテンシャルを下げることが示されていて、今回の人間の結果と一致する。
コンピュータモデルもこの仮説を支持。16Hz以下で聴覚閾値の曲線が平坦になる現象を再現できたという。
この発見が面白いのは、環境騒音への感じ方の個人差に生理学的な説明を与える可能性がある点。複雑な周波数を含む低周波ノイズの場合、高めの周波数成分が超低周波の電気活動を抑制するかもしれない。つまり、同じ音量でも音の「構成」次第で、ある人はイライラし、隣の人は平気、ということが起こり得るわけ。
ただし、今回の研究はあくまで基礎的なメカニズムの提案。風力発電や交通騒音など実際の環境騒音には触れておらず、個人差との関連を確認するには別の実験が必要だと著者らは認めている。参加者も11人と7人と少ないし、コンピュータモデルは単純化したもの。まだ仮説の段階ではあるけど、「聞こえない音がなぜ気になるのか」という長年の疑問に、初めて具体的な生理学的ルートが示されたのは大きな一歩だ。
あなたの周りにも「あの低い音が無理」って人がいたら、この話をしてみるといいかも。耳の中の電気信号が、その人の感受性を決めているのかもしれないよ。
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