コロナの免疫記憶をがん攻撃に再利用、マウス実験で腫瘍縮小に成功
コロナ禍でほとんどの人が手に入れた「スパイクタンパク質への免疫記憶」。これをがん治療に転用するという、ちょっとズルいけど賢いアイデアのワクチンが登場した。
その名も「PROTEXI」。仕組みはこうだ。免疫の伝令役である樹状細胞に、がんの断片と一緒に、新型コロナのスパイクタンパク断片を載せて体内に送り込む。すると、すでにコロナワクチンや感染で準備済みのヘルパーT細胞が「あ、こいつ知ってる!」と反応。その勢いで、隣にいるがん細胞もまとめて攻撃対象にしてしまうというわけ。
デニムに合う。履くだけで「ちょいワル」Tapoon 研究者によれば、アメリカ人の80%以上、世界中の65%以上が何らかの形でスパイクタンパク質に対する免疫を持っている。つまり、ほとんどの人がこの仕組みの“助っ人”をすでに体内に備えているということだ。
従来の樹状細胞ワクチンは、患者ごとにがん特有のヘルパーシグナルを探さなければならず、それが難関だった。結果、効果が出るのは約15%の患者にとどまっていた。PROTEXIはその壁を、既存の免疫記憶を流用することで突破した形だ。
マウスのメラノーマ(皮膚がん)と乳がんのモデルで試したところ、従来のワクチンより明らかに腫瘍の成長を抑え、生存率も向上。ワクチン投与前にヘルパーT細胞を除去すると効果がほぼ消えたことから、この細胞がカギを握っていることも確認された。
さらに面白いのが「エピトープ拡散」という現象。ワクチンが標的にした部分とは別のがんタンパク質に対しても免疫が攻撃を始めたのだ。いわば、火事場のクソ力を利用して隣の部屋まで片付けちゃう的な。メラノーマ患者の長期予後改善にもつながるとされるこの効果が、マウスでも確認された。
既存の治療が効かなくなった腫瘍にも効果を発揮。免疫のブレーキを外す「チェックポイント阻害薬」と併用すると、単独より強力な腫瘍制御ができ、さらに別の経路を阻害する薬も加えたところ、治療したマウスの4分の1が50日以上、完全に腫瘍なしの状態を維持した。
最終試験では、実際にワクチン接種を受けた人間の免疫細胞を移植した「ヒト化マウス」にヒトのメラノーマ細胞を植え付け、本物のスパイクタンパク断片を使ったPROTEXIを投与。結果、未治療のマウスより腫瘍の成長が遅くなり、スパイク特異的な免疫応答も3〜4倍に上昇した。
「何十年もの間、ヘルパーT細胞の重要性は認識されていたが、臨床で使えるシグナルを見つけるのが難しかった。PROTEXIは強力な抗ウイルス免疫記憶を腫瘍の根絶に向けて方向転換する、説得力ある解決策だ」と、ユニバーシティ・ホスピタルズ・レインボー小児病院のジョン・レテリオ博士はコメントしている。
ただし、すべての結果はマウスでのもの。人間で同じ効果が出るかは未知数で、異なるレベルのコロナ免疫や、異なる種類のがんへの効果もまだ不明。論文の著者らも「マウスの成功は人間の成功を保証しない」と釘を刺している。
現在、研究チームは肉腫(サルコーマ)患者を対象にした初のヒト試験に向けて準備を進めているという。コロナ禍の副産物が、がん治療の新しい扉を開くかもしれない。
これは高圧洗浄機と同等の強さで、電力不要BlastPro
今、あなたにオススメ