キノコから作ったバッグ、わずか28日で分解。本革超えの強度も
菌糸を発酵タンクで培養して作った布が、本革に迫る強度を実現し、しかも水中でわずか28日間で77%も分解される——そんな研究結果が、フィンランドのVTT技術研究センターから発表された。
研究チームは、産業用酵素の生産ですでに使われている「Trichoderma reesei」というカビの一種を採用。液体発酵タンクで効率よく増殖させ、パルプ状の塊を得る。小さな実験では培養液1リットルあたり5〜6グラムの乾燥材料が取れたが、10〜20リットル規模のタンクにスケールアップすると、最大で45グラムにまで増えた。
エアコンなしで部屋を涼しくするならこの一台Airio Pro ただし、菌の育て方のちょっとした違いで、できあがる布の強度が大きく変わってしまうという課題も。試行錯誤の末、パルプを洗浄する工程でメタノールを加えてから木質繊維(ナノフィブリル化セルロース)を混ぜる方法が最強の結果を生んだ。この配合でできたシートの引張強度は約19メガパスカル。クロムなめしの牛革(8〜15メガパスカル)を上回る数値だ。
ただし、伸び率は約10%と、牛革の37〜68%には遠く及ばず、研究チームも「高柔軟性が求められる用途にはさらなる改良が必要」と認めている。
試作品として、黒く染色した菌糸布でハンドバッグも縫製。緑や赤の着色も可能で、表面に凹凸をつける加工や、裏地に綿布を貼って引き裂き強度を上げることもできた。パイロットスケールの製造ラインでは、幅約22センチ、長さ8メートルのシートを毎分1メートルの速度で連続生産することにも成功している。
環境面でのアドバンテージも大きい。同じ水中条件で牛革は119日間でわずか15%しか分解されず、ビニール混紡の綿布でも35%止まり。一方、菌糸布は28日で77%が分解され、58度の産業用コンポスト環境では6週間で完全に消えた。ただし研究者らは「本革との包括的な環境比較はまだ行っていない」と慎重だ。
耐引裂性や耐摩耗性の正式な試験はこれからで、ロールtoロールでの巻き取り生産も、ベルトの耐熱性の問題で実現できていない。発酵バッチごとの品質ばらつきも未解明で、実用化にはまだハードルがある。
「とりあえず、このバッグはちゃんと形を保って棚に置けるし、コンポストに入れれば速攻で消える」——そんな研究チームの手応えが伝わってくる、菌糸布の第一歩だ。
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