PTSD悪夢にTHC薬が効果、3分の1で完全消失。離脱症状なし
PTSD(心的外傷後ストレス障害)に悩む人々にとって、夜は特に辛い時間だ。PTSD患者の約5〜7割が悪夢に悩まされ、それは自殺念慮や薬物乱用にもつながる。ところが、これまで医師は悪夢に特化した有効な薬をほとんど持っていなかった。抗うつ薬は一部の症状を和らげるが悪夢には効かず、高血圧薬プラゾシンは小規模試験で期待されたものの大規模試験で失敗。そんな“どん詰まり”状態に、まさかのブレイクスルーが訪れた。
独シャリテ医科大学などの研究チームが実施した二重盲検ランダム化比較試験で、大麻の主成分THCを医薬品化した「ドロナビノール」が、PTSD関連の悪夢を劇的に減らすことが示された。論文は医学誌『Nature Medicine』に掲載され、2020年10月〜2025年1月にかけてドイツの4医療機関で実施。参加したPTSD患者171人(平均年齢38歳、約8割が女性)の大半は身体的・性的暴行の生存者で、戦闘経験者はごく少数だった。
デニムに合う。履くだけで「ちょいワル」Tapoon 患者は半分に分けられ、87人がドロナビノール、84人がプラセボ(見た目も味も大麻風にそろえた偽薬)を10週間服用。用量は1日2.5mgから始め、4週間かけて最大15mgに調整し、就寝前に服用した。結果は明白で、悪夢のスコアはプラセボ群の約2倍改善。半数以上の患者で悪夢が半分以上減少し、なんと3分の1以上で悪夢が完全に消えた(プラセボ群は15%)。さらに睡眠の質も向上し、PTSD症状全般の自己評価も改善した。
ただし、注意点もある。副作用はドロナビノール群で約90%(プラセボ群77%)と多めで、口渇やめまい、疲労感、吐き気などが報告された。重篤な有害事象はドロナビノール群で7件(研究薬の過剰摂取2件を含む)発生したが、研究者らは薬剤との直接の因果関係は否定。死亡例はなく、副作用で脱落したのは両群とも約6%だった。また、THCの精神作用が強く、患者の多くが実薬かどうかを推測できた可能性があり、その“思い込み”が結果に影響したかもしれない。
気になる依存性については、投与中止後の離脱症状チェックリストで有意な増加は認められず、ひとまず安心材料。ただし10週間の試験では長期使用による耐性や依存のリスクは評価できず、今後の追跡が課題だ。研究資金は独製薬会社Bionorica SEの無制限助成金で、同社が薬剤も提供したが、研究デザインやデータ解析には関与していない。
「これは万能薬でもPTSDの根本治療でもない」と研究者らは慎重だが、悪夢という具体的で深刻な症状に効く薬が厳格な試験で証明された意味は大きい。特に、自殺リスクとも関連する悪夢を減らせる手段が増えたことは、多くの患者にとって朗報だろう。ただし現時点では処方薬であり、自己判断での使用は厳禁。今後の長期試験で安全性と効果が確認されるかどうかが次の焦点だ。
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