恐竜に400g以下の種が一切いなかったのは「哺乳類のせい」だった
「恐竜って大きくてカッコいい」というイメージは間違いじゃない。でも、なぜあれだけ多様なグループなのに、大人になっても缶詰スープ(約400g)より小さい種が一匹もいなかったのか? この謎に、プリンストン大学とアメリカ自然史博物館の研究チームが数学モデルで挑んだ。
研究チームはまず、エネルギー獲得効率と子孫への変換効率のバランスから「最も繁殖に適した体重」を計算するモデルを、現生の鳥類・哺乳類・カメ・トカゲ・ヘビ・ワニに適用。哺乳類は約100g、鳥類は約33gが理論上の最適値で、実際の分布もほぼ一致した。ところが非鳥類型恐竜に当てはめると、モデルが予測する最大最適値はたった3kg。実際の恐竜はもっと大きく、しかも最小の大人恐竜でも約400gを下回らないという下限があった。
これは高圧洗浄機と同等の強さで、電力不要BlastPro 「化石の保存バイアス(小さい骨は残りにくい)では説明できない」と研究チーム。なぜなら、中国の熱河層群やモンゴルのジャドフタ層のように、小型の哺乳類やトカゲの化石が豊富に出る地層でも、400g未満の大人恐竜は完全に欠けているからだ。
では、なぜ恐竜は小さくなれなかったのか? 研究者が目を向けたのは「哺乳類との競争」。恐竜時代、小型哺乳類はすでに多様で、小さなニッチを埋めていた。恐竜がわざわざそのサイズに進出する余地がなかったというわけ。
この仮説を裏付けるのが、島嶼(とうしょ)の生物の例だ。捕食者や競争相手が少ない島では、トカゲはより大型化し、飛べない鳥はより小型化した。つまり、生態的プレッシャーがなければ、生物はエネルギー効率の良いサイズに近づく。逆に大陸では、捕食や競争がサイズを歪めている。
そして、飛べない鳥類の陸上でのサイズ分布は、なんと非鳥類型恐竜とそっくり。ほとんどが大型で、小型種はほぼいない。
ここで登場するのが飛翔(ひしょう)の進化だ。現生の最小鳥類・マメハチドリはわずか1.74g。非鳥類型恐竜の最小種より約200倍軽い。この激変は前期白亜紀、現代的な飛行能力が出現した時期と重なる。
「飛行は恐竜を地面から引き離しただけじゃない。生態的制約から解放し、エネルギー論理に従った超小型化を可能にした」と研究チームは推測する。空という新天地には、哺乳類のような小型競争相手が少なかったのだろう。
「鳥類は生きている恐竜」と言われるが、その小ささこそが、他の恐竜には決して辿り着けなかった進化のフロンティアだったのかもしれない。
ただし、研究には限界もある。絶滅恐竜の生理的パラメータは現生動物からの推定であり、化石記録の不完全さは完全には払拭できない。また、ワニ類のデータが現存種に限られる点も注意が必要だ。
それでも、「体サイズは生物学だけで決まらず、生態や競争、進化史の偶然が大きく影響する」というメッセージは、恐竜ファンにも生物好きにも刺さるだろう。缶詰スープより小さい恐竜が見つかる日は、おそらく来ない。
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